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木造3階建ては揺れる?

 木造3階建てについてネットで検索してみると「揺れるので困っている」という書き込みがあります。私もある不動産屋さんから「在来工法は揺れるでしょ!」と言うのを聞いたことがあります。
 ここでその原因について私なりに推測することを書きたいと思います。まず、その工事が悪質な手抜き工事ではなかったということを前提に述べさせていただきます。
 建築に携わった業者や設計事務所が自分の利益のために手抜き工事をしたのではなく、不慣れであったり未熟であったため、自分では気がつかずにそういう物を建築してしまうこともあります。多数の物件を経験していると大工さんや監督が大切なことを知らなかったために設計者として注意したこともありました。

 その中でも建物が揺れる原因となる事に次のような事が上げられます。
梁のたわみ計算に余裕がなかった
 梁の許容応力度計算をしてみると、自分の経験より小さい材料でもOKとなる事があります。計算の基準は通常梁の長さの1/300以内になっています。
 実際に計算してみると、細かい設定は省略しますが、スパンが3600の小梁の場合。105×180でもたわみは11.4mmで3600/300=12mm以下です。これで設計し、確認申請してもOKとなるのです。しかし、プレカット業者などはスパンが3600なら105×210を使うことが多いようです。これは昔から経験上180では心細い為、210を使用してきたのだと思いますが、実はそれでちょうど良いのです。
 当事務所が構造計算する場合は1/300ではなく1/500で材料を選択するようにしています。これだとスパンが3600では7.2mmとなります。特に、ムク材では節や割れが多いので過剰設計とは思いません。
 そういう配慮をせずに構造計算でOKだからといってギリギリの材料で設計すると揺れる原因となるのです。

スジカイに遊びがあった
 柱と梁に囲まれた部分に斜めに取り付けるのがスジカイ(筋違・筋交いとも書く)です。この材料の両端は当然斜めにカットされています。これには多少の技術が必要です。柱や梁に隙間無く取り付けてあれば問題がないのですが、多少の隙間を気にしない業者もいるのです。それが不必要な遊びとなり揺れる原因となります。
 例えば、材料の両端に2mmずつ隙間があった場合、壁の幅と高さの比は約1:3なので上下方向の4mmは横方向に変換されたときには3倍の12mmになり、3層分合わせると36mmにもなるのです。もしも隙間を見つけたらやり替えてもらうか埋め木を設置して遊びがないようにしなければなりません。
 特に耐力壁に合板を使用せず、スジカイだけで設計する場合は要注意です。なぜならば、合板と併用した構造なら、合板には全く遊びがないので、地震や台風などが来ない限り合板はスジカイの耐力を使わなくても役目を果たしているので、あまり揺れることは無いと思います。